私は以前、人材育成や教育研修を通じたコンサルテーションを行う会社に勤めており、営業をしていました。
『コンサルティング』という横文字のかっこよさに釣られたのと、就活を早く終わらせたいという心もあったのでしょう。
内定をもらえたその会社で働くことを決め、就活を止めました。
全社では当時600名程度の会社で、全国各地に営業所があり、私の営業所は営業が6名、営業事務1名という体制でした。
朝は7時45分くらいに出社し、営業所内の掃除を入社歴の一番低い社員が行い、全員にお茶を入れるところからスタート。
ただし、営業職ですので、アポイント状況によっては、顧客の所へ直行することも多くあります。
その場合、営業エリアにもよるのですが、片道2時間程度の顧客もあり、6時台(首都高なども使用するため、渋滞なども視野に入れる必要があるため早め)に出ることも普通でした。
仕事のサイクルとしては、�@顧客の開拓、�A既存顧客への訪問・ヒアリング、�B企画書・提案書の作成、�C研修等の実施(営業は講師の雑用等の支援業務)というものです。
顧客への訪問時間の合間を縫って、企画書等の作成をしつつ、新規開拓で電話をかけたり、飛び込み営業をしたり、次のアポイントのための移動をしたりすることとなります。
会社(というか営業所)の方針で1日3件は訪問することが求められており、アポイントの取り方次第では、移動時間と含め、それだけで8時−17時(定時)は過ぎてしまうこともあります。
もちろん少なくて3件ですので、4件・5件回ることも当然あります。その場合帰社時間は定時を過ぎます。
しかし、時間は待ってくれませんので、その後で、作成が完了していない企画書等を残業して作成することになります。
結果、営業所で日付が変わることも多くなります。
その会社では、みなし残業による年棒制度を採用しており、月の給料は手取りで23万円程度。業績によりインセンティブで給料とは別でイロが付きます。
年収は350万円程度となるので、20代だった当時としては、収入は多かったと思います。
ただ、月25万円で、日当1万円、8時から24時まで働くとすると、時給は666円(16時間拘束。休憩1時間とした場合。実際には、移動時間等に充てるため、真面目に働くと休憩などないも同然かつ、土日も研修等が入っていれば、短時間の出勤などはします)。
つまり、コンビニバイトを毎日した方が儲かります。
顧客は中小企業の経営者や役員、大企業の人事部長・課長など、なかなか話す機会もない人と話すことができ、楽しいものでした。
しかしながら、前述したような入社理由の私には、この楽しさよりも、ノルマ管理される長時間労働の辛さに耐えることができませんでした。
そんな中、先輩社員が「今日の研修はスタートが遅く、家から近かったから、娘が起きている時間に出れた。行ってきます。と娘に言うと、いってらっしゃい、次はいつ帰ってくるの?と聞かれたよ。」と笑い話をするのを聞き、退職を決めました。
その先輩は日常的に全国移動が多く、仕事の都合で宿泊することが多く、家には帰っても、娘さんが寝ている時間に帰り、寝ている時間に家を出るのだそうです。
それが、自分の将来像だと思った時、その仕事を続けていくことができないと確信しました。
後輩には、自分の思っていること、感じていることを素直に打ち明け、将来像を描くことと合わせて、いかに仕事を“サボる”かの重要性を話しました。
自分は良くも悪くも愚直で、「やらなければならない」という強迫観念にも似た感情を日々背負って働いていました。
しかし、それでは、仕事は続かない。
自分で自分の仕事をコントロールしつつ、上司のイヤミや愚痴をスルーし、マイペースで楽しい部分を大切にして仕事をすること。
それがこの仕事、営業という仕事では、重要なのだと、伝えました。
きっと、私が父親になり、自分の子供が就職するときにも、そんな話をするのだと思います。